こんにちは、ドルフィンシステムの笹生です。
まだまだ暑い日が続きますね。急な雷雨も多く、洗濯物を外に干すときには注意が必要ですね。
さて本日は「ドルフィンシステム開発事例 (9) 2016年 : 複数 USRPとMATLABを連携した干渉信号認識ソリューションの開発事例 」についてご紹介させていただけたらと思います。
現代の無線通信環境は、さまざまな周波数帯域を複数のデバイスが利用しており、干渉の問題が頻発しています。こうした状況下で、干渉信号を的確に認識し、適切な対応を行う技術がますます重要になっています。そうした中、2016年に受託をさせていただいた「USRPとMATLAB を連携した干渉信号認識ソリューション」を事例として紹介します。本プロジェクトでは、お客様は考案された WiFi-5 (IEEE 802.11ac)を対象に、干渉信号を効率的に検出するためのMATLABでの解析アルゴリズムを作成いただき、弊社からは複数台の USRP から MATLAB と連携させるソフトウェアソリューションを提供しました。
プロジェクト概要
このプロジェクトでは、USRP-RIO (USRP-2954等)を2台使用し、4つのアンテナで信号を同時に受信するシステムを構築しました。ターゲットとなるのは、WiFi-5規格の信号で、MATLABでお客様の開発された解析アルゴリズムと連携して干渉信号の認識を行います。
具体的な機能としては:
4アンテナのキャリブレーション
まず、正確な信号処理を行うために、4つのアンテナ間のキャリブレーションを実施しました。これにより、アンテナごとの位相、振幅の差異を最小限に抑え、精度の高いデータ収集が可能となりました。WiFiチャンネルの占有率計測
次に、WiFiのチャネルごとにどの程度帯域が占有されているかを計測しました。これにより、特定のチャネルが干渉を受けやすいかどうかの判断が可能です。この機能は、実環境においてネットワークの最適化やトラブルシューティングに役立ちます。信号の方位推定
最も特徴的な機能の一つが、WiFi信号がどの方向から到来しているかを推定する機能です。この技術により、干渉源の特定や電波環境の分析が容易になり、問題解決までの時間を大幅に短縮できます。
MATLAB と USRP のシームレスな連携
このプロジェクトの大きなポイントは、お客様がMATLABで開発した解析アルゴリズムを、弊社のLabVIEWを使用したUSRP制御ソフトウェアとシームレスに連携させたことです。これにより、以下のようなメリットが生まれました。
アルゴリズムの秘匿性
お客様はご自身で開発されたアルゴリズムを弊社に開示することなく、USRPから取得した信号データを処理することができます。これにより、知的財産の保護が強化されます。効率的な作業分担
ハードウェア制御部分を弊社が、解析アルゴリズム部分をお客様が、と明確に分担されたことで、それぞれの専門分野に集中し、効率よくプロジェクトを進行できました。コストの最適化
各タスクが分担されることで、無駄を省き、トータルコストを削減することができました。自由なアルゴリズムの検証と修正
お客様は、USRPから取得したデータを用いて、ご自身の環境でMATLABのアルゴリズムを自由に検証し、必要に応じて修正することができます。この作業は弊社を介することなく進めることができ、プロジェクト全体の進行をスムーズにしました。
課題と将来展望
今回のソリューションには多くのメリットがありましたが、リアルタイム処理という観点では、初期段階ではいくつかの制約がありました。USRPからデータを取得して解析する際、MATLAB で解析させることで、リアルタイム性を確保できないという課題がありました。
しかし、これはアルゴリズムの検証・修正が正確に行われた後、次のステップとしてFPGAへの実装などを行うことで解決可能です。FPGAは、リアルタイムでの処理を行うための非常に強力なツールであり、干渉信号の迅速な検出と対処が可能となります。これにより、リアルタイムでの無線通信環境の管理が実現し、実運用に耐えるシステム構築へとつながります。
そうしたステップを考えると、研究初期ではこのように
・ハードウェア制御部分を弊社が開発
・解析アルゴリズム部分をお客様が MATLABで記述
という連携は次につなげやすい非常に優れた方法だと思います。
まとめ
このプロジェクトでは、USRPを活用したシステムとMATLABで開発されたアルゴリズムの連携を通じて、干渉信号の認識に関する高度なソリューションを提供することができました。これからも、こうしたソリューションを通じて、お客様の課題解決に貢献していきたいと考えています。
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