ドルフィンシステム開発事例 (8) 2014年 : 独自の無線方式検討の為のコンサルティングと開発

こんにちは、ドルフィンシステムの笹生です。

台風10号が九州地方に接近しているようです。伊勢湾台風並みの非常に強い勢力のようですので心配ですね。

さて今回は「ドルフィンシステム開発事例 (8) 2014年 : 独自の無線方式検討の為のコンサルティングと開発」についてご紹介させていただけたらと思います。

お客様の最終ゴールとしては最適な無線の方式の設計になるのですが、そのお手伝いとして弊社のほうでコンサルティング(提案)と無線環境の計測ソフト開発・それを解析するソフトウェアの開発を行いました。

考え方としましては割と汎用的な内容だと思いますので、今回共有させていただきます。



無線方式設計までの流れの提案

独自に無線方式を検討・設計するといっても、むやみやたらと流行っている方式を使えばよいという訳ではありません。当然適材適所な方式を検討し、組み合わせる必要があります。お客様には以下のような流れが必要であると説明しそれに沿って必要なソフトウェアを開発・ご提供しました。

MAPIFY というAIツールでタイムラインにすると↑のような感じですね。(クリックで拡大します)

以下では提案内容についてこんな感じでご紹介しました。(あくまで例ですので細かいところはお客様の状況に合わせて変えてご提案します。)

情報収集と初期検討

無線通信システムの設計を始めるにあたり、まず最初に行うべきことは、通信の目的や使用環境を整理することです。例えば、システムが対象とするユーザーの数、通信距離、使用する周波数帯や帯域幅など、初期段階で収集する情報は、最適な通信方式を選択するための基盤となります。

通信方式の決定

通信方式の選定においては、まず利用可能な周波数帯を確認し、プロジェクトの目的に最適なものを選びます。例えば、都市部での高密度なユーザーに対応する場合、高い周波数帯域を選択することで、多くのデータを短時間で送受信することが可能です。一方、広範囲での通信が求められる場合は、低い周波数帯を選ぶことで、遠くまで電波を届かせることができます。

サウンディングの役割

次に、サウンディングと呼ばれるプロセスを通じて、通信環境を詳細に分析します。サウンディングは、電波がどのように伝搬するかを測定し、得られたデータを基にチャネルモデルを構築するために不可欠なステップです。これにより、電波の反射や遅延、減衰といった要因を考慮し、通信方式を最適化することが可能となります。

チャネルモデルの構築

電波環境を正確に把握することは、無線通信システムの設計において極めて重要です。チャネルモデルは、この電波環境を数値的・数学的に表現するものであり、設計の基盤となります。チャネルモデルには、ドップラー効果、遅延波、減衰など、実際の環境で電波がどのように振る舞うかを反映させます。

ドップラー効果と遅延波の影響

例えば、移動体通信においては、ドップラー効果が電波の周波数に影響を与えるため、通信の品質に大きな影響を与える可能性があります。遅延波は、電波が建物や地形に反射されることで発生し、通信の遅延や干渉を引き起こします。これらの要素を正確にモデル化することで、現実の環境に近いシミュレーションが可能となり、設計の精度が向上します。

通信方式の設計と最適化

チャネルモデルをもとに、最適な通信方式を選定します。ここでは、接続方式や変調方式、さらにはエラー訂正符号など、複数の要素を総合的に検討します。

接続方式と変調方式の決定

例えば、接続方式としてはTDD(時分割複信)やFDD(周波数分割複信)があり、それぞれの特徴を理解し、プロジェクトのニーズに最適なものを選びます。また、変調方式の選択も重要であり、システムの帯域幅やエネルギー効率に大きく影響します。これらの要素は、通信のロバスト性を高め、信号の誤りを最小限に抑えるために不可欠です。


上記のような内容をお打ち合わせではご提案し、お客様の方でお持ちではないツールやスキルについては弊社のほうでご提供するというような流れでした。


実際に開発したサウンダ

当時開発してご提供した Simple-Sounder についての概要は以下のようなものです。

Simple Sounder

通信環境を調査するためには、サウンディングという方法を用います。

特に、サウンディングをする装置をサウンダと呼びます。

例えば、簡易的に通信を数式で表すと、周波数 f での、送信する電波を X(f)、環境による影響(無線チャネルと呼んだりします)を H(f) 、受信した電波を Y(f) とすると、

Y(f) = H(f)X(f)

と表現されます。

ここで、原理的には X(f) が既知の信号(サウンディング信号と呼びます)であれば、受信した Y(f) のデータをもとに無線チャネル H(f) が求まります。

H(f) = Y(f)/X(f)

この H(f) を求めるために、既知信号 X(f) を送信する 送信機(Tx) と、受信信号 Y(f) を保存する 受信機(Rx) のシステムをサウンダーと呼び、計測することをサウンディングといいます。

サウンダーでは、この環境を表す無線チャネルをできるだけ正確に導きたいので、その他の条件は全て既知にしておくことが肝要となります。

弊社 Simple-Sounder サウンダソフトウェアは、

・既知信号 X(f) を生成し、NI-USRPから信号を電波として送信する機能

・NI PXIe-5644R で電波を受信し、ハードディスクに記録する機能

を持つソフトウェアです。以下の図のような構成です。



並行して保存した信号を解析する解析ソフトウェアも同時に開発しました。
チャネルモデルを作るための土台となるソフトウェアです。

また当時は解析結果を弊社のRiviera フェージングシミュレータで再現させるカスタマイズも行いました。

まとめ

今回ご紹介した記事では、最適な無線通信方式の設計を目指してお客様のニーズに合致したソリューションを提供することができました。無線環境の計測をするためのシンプルなサウンダの開発により、実際の通信環境での計測と検証が可能となり、無線方式の検討・設計にどのような要件が必要になるのかの一助になりました。






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