ドルフィンシステム開発事例 (4) 2008年 : 復調をせずに無線システムを識別するアルゴリズムの FPGA 実装

こんにちはドルフィンシステムの笹生です。


今回は「ドルフィンシステム開発事例 (4) 2008年 : 復調をせずに無線システムを識別するアルゴリズムの FPGA 実装」についてご紹介させていただけたらと思います。

このプロジェクトは当時 NTTドコモ様 が総務省からの委託を受けて実施した「同一周波数帯における複数無線システム間無線リソース制御技術の研究開発」の一部を弊社が受託した形になります。

最終的には上記研究開発の成果である無線信号識別技術の IP コアを搭載した「無線信号処理装置 ベースキット 無線信号識別IPコア バンドル」として弊社がリリースをさせていただいたこともございました。(弊社お知らせ)

数学的にも実装面でも非常に難しいプロジェクトでしたが、チャレンジさせていただいた御蔭で提供いただいた数学モデルからの FPGA 実装やシステム制御方法について多くの経験をさせていただきました。

(ちなみにトップの画像は AI (DALL-E3) が生成した「復調をせずに無線システムを識別するアルゴリズムの FPGA 実装」のイメージだそうです。なぜか人のようなものが回路のようなところに複数立っていますが何をしているのか謎です。。。最近 AI にプログラミングさせてプログラマーの仕事を奪ってしまう危機感もありますが、弊社の仕事が奪われるのはまだもう少し先かもしれません(笑))

無線信号識別IPコアとは?

周期定常性を利用した周期自己相関関数による無線信号システムの識別をするアルゴリズムを実装した FPGA IP コアです。

当時はコグニティブ無線やホワイトスペースの有効活用といった周波数資源の有効利用についての研究が活発に行われておりました。

そのための色々な技術の研究がされていたわけですが、そのうちの一つの技術として、無線システムの持つ固有の周期的な特徴を周期自己相関で検出し、それが該当する無線システムかどうかをχ二乗検定で識別する技術です。

この技術の想定する場面としては、コグニティブ無線の機能として該当する周波数で同様な無線システムが使われているかなどをリアルタイムで把握するような場面に用いられるところです。

本プロジェクトで弊社は光電製作所様の cPCI RF 信号処理システム E-1072 の FPGA への実装と制御・演算結果の表示ソフトウェアを開発しました。

上記は展示の写真です。

全体のブロック図としては以下のような構成でした。

アルゴリズムを FPGA に実装するために

当時お客様からは MATLAB スクリプトでアルゴリズムの提供をしていただき、それを基に弊社でソフトウェアや FPGA へ実装するために事前に検討をしてお見積りをする流れを取っていました。(現在も割と多いです)

この時最も気を使ったのが、ターゲットにする FPGA のリソース規模にアルゴリズムが実装できるかどうかでした。

周期自己相関のようなアルゴリズムは非常に乗算の回数や足し込む回数が多く、普通に実装してしまうと固定小数点で実装する際に必要なビット精度が爆発的に増えてしまいます。

そこで予め頂いたアルゴリズムの MATLAB スクリプトを基に、弊社で SciLab にてアルゴリズムについて変形や精度についての事前検討をしたりしました。
(現在は MATLAB ライセンスを弊社でも持っていますが、立ち上げたばかりの当時は MATLAB のライセンスが高額で購入できなかったので仕方なく SciLab を利用して検討していました)

必要な行列演算の部品の開発

またこのプロジェクトの為に LU分解ベースの逆行列演算や共分散行列の計算を弊社で一から設計・開発し FPGA に実装させました。

ちなみにこの時の逆行列の性能は以下の通りでした。
わりと汎用的に作っていたので、2x2 から 20x20 までの実行サイクル数などを取得しています。


FPGA リソース数見積りは以下のような感じでした(Virtex4 SX55 でした)

また制御ソフトでは、コマンドでのバッチ処理ができるようになっていて、SCPIコマンドも使って外部機器制御とこの信号識別装置の制御を行って実験の自動化などもできるようにしました。



ライセンス契約の締結

本プロジェクトは 2008年~2011年までアルゴリズムの拡張もしつつお手伝いをさせていただきました。(その後も拡張や実用化に向けてのお仕事は続きました)

そしてその成果を基に NTT ドコモ様とライセンス契約を締結し、実用化として「無線信号処理装置 ベースキット 無線信号識別IPコア バンドル」を弊社からリリースさせていただきました。


この写真は(見づらくてすみません)RCS研究会での実際の会場に飛んでいる LTE を検出させているデモの写真です。


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