サッカーワールドカップでは見事日本がグループリーグを突破してくれましたね。
今回の W 杯ではVAR (ビデオ・アシスタント・レフェリー)や、ゴールラインテクノロジーなど最新の技術も話題ですよね。
そんな中、最近のサッカーの試合をよく見ると審判がヘッドセットのようなものを付けています。調べたところ最近の審判のコミュニケーションには無線機が使われているようです。世界的には2006年のドイツ・ワールドカップで初めて導入されたようですね。
ちなみに Jリーグで使われている無線機は 928MHz帯でスペクトル拡散の TDMA だそうです。
https://www.hamlife.jp/2014/08/10/httpwww-hamlife-jp20140219j-league-referee-communicationsystem-3/
5Gの時代、さらにその先に向けてこれまで以上に様々なところで無線の技術が使われることと思います。弊社の SDR 技術もそうした先進の無線研究のお役にたてさせていただいています。
さて今回は無線機内部での信号の回り込みについてです。
USRP に限らず一般的な無線送受信器でも機器内での送信側と受信側のアイソレーションが完璧にとれず信号が回り込んでしまうことがあるようです。USRP でも USRP の内部で信号の回り込みが発生することがあり、NI社のフォーラムでも色々と議論されているようです。
https://forums.ni.com/t5/LabVIEW/USRP-RIO-Channel-Isolation/td-p/2969895
https://forums.ni.com/t5/USRP-Software-Radio/self-interference-inside-USRP/td-p/3296041
実際にどの程度の回り込みが発生するのかを確認してみたいと思います。
弊社にある
USRP-2922
USRP-2943R (USRP-RIO)
USRP-2954R (USRP-RIO)
の三種類で実際に回り込みの確認をしてみます。
回り込みのルートで考えられるのが
① 送信信号の受信側への回り込み
② 受信信号の送信側への回り込み
があります。
今回は
① 自身の送信信号の受信側への回り込み
について調査したいと思います。
①自身の 送信信号の受信側への回り込み
送信側と受信側の周波数設定を同じにし、送信側から 0dBm 相当の信号を出力します。
その時、送信ポートと受信ポートは何も接続しない状態にしておきます。(つまり外部での回り込みは基本的に無いものとします)
本来きちんとアイソレーションが取れていれば何も受信しないはずですが、回り込んでいれば信号が受信信号のスペクトラムに表れるはずです。
USRP-RIO系統は 2入力 2出力なので、
RF0 -TX からの送信させて RF0 - RX2 (送信ポートに近いすぐ隣の受信ポート)とRF1-RX2 (送信ポートから遠い受信ポート)で観測してみます。
まずは結果
結果としてはこのようになりました。
USRPタイプ |
回り込み量(送信ポートに近い) |
回り込み量(送信ポートから遠い) |
USRP-2922 |
-45dBm |
1ポートのため計測なし |
USRP-2943 |
-60dBm |
-75dBm |
USRP-2954 |
-50dBm |
-87dBm |
回り込み量としてこのレベルが良いかどうかの判断はアプリケーションにもよると思いますので、ここで言及はしないでおきます。
USRP-2922 の回り込み
http://www.ni.com/ja-jp/support/model.usrp-2922.html
送信ポートと受信ポートは何も接続しない状態にしておき、送信側と受信側の周波数設定を同じにし、送信側から 0dBm 相当の信号を出力できる状態にします。(アンテナ等は接続しないので実際には外部には電波は出力されません)
本来きちんと送信と受信の間のアイソレーションが取れていれば何も受信しないはずですが、回り込んでいれば信号が受信信号のスペクトラムに表れるはずです。
結果はこちら↓
大体 -45 dBm 程度で受信側に回り込んでいます。
USRP-2943 の回り込み
http://www.ni.com/ja-jp/support/model.usrp-2943.html
送信 2 ポートと受信 2 ポートは全て何も接続しない状態にしておき、送信ポートから 0dBm 相当の信号を出力できる状態にします。(アンテナ等は接続しないので実際には外部には電波は出力されません)
USRP-RIO系統は 2入力 2出力なので、
RF0 -TX からの送信させて RF0 - RX2 (すぐ隣のポート)とRF1-RX2 (離れたポート)で観測してみます。この時わかりやすいように少し周波数をずらして観測しました。
結果はこちら↓
青が送信ポートのすぐ隣の受信ポートでの回り込みの状況で、赤が送信ポートから離れたところの受信ポートの回り込みの状況です。
すぐ隣では -60dBm 程度、離れたポートでは -75Bm程度回り込んでいるようです。
USRP-2954 の回り込み
http://www.ni.com/ja-jp/support/model.usrp-2954.html
先ほどの USRP-2943 と同じ方法で計測してみました。
結果はこちら↓
青が送信ポートのすぐ隣の受信ポートでの回り込みの状況で、赤が送信ポートから離れたところの受信ポートの回り込みの状況です。
すぐ隣では -50dBm 程度、離れたポートでは -87Bm程度回り込んでいるようです。
まとめ
このように USRP では自身出す送信信号の受信側への回り込みが少なからずありそうです。
各 USRP で搭載している RFボードによって、回り込みの影響は少し異なるようです。
例えば、USRP-2943 では、離れた受信ポートにもそれなりに回り込んでしますが、USRP-2954 では離れた受信ポートにはそれほど回り込んでいません。逆にすぐ隣のポートへの回り込みは USRP-2954 の方が大きいようです。
回り込みのレベルとして、40dB 以上は小さくなっているようなので、アプリケーションによっては問題ないかと思います。
次回は受信した信号が送信側に回り込んでしまうかを確認したいと思います。
ドルフィンシステムではこのような情報も収集しつつ、お客様のアプリケーション実現に最適な SDR システムのご提案をしております。
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